2021.04.03
そろばんの効能について
●まえがき
かつては、小学生の習い事として定番だったそろばん。
しかし、近年はそろばんを習う子どもたちの数も珠算教室の数も全盛期(1980年前後)の頃と比べ大幅に減少しているようですね。
たしかに今はもう、電卓に始まりパソコン、スマートフォン、タブレットなど、数字を入れるだけで勝手に(しかも100%の正確さで)欲しい答えを出力してくれる利器が普及していて、そのなかでわざわざ“アナログな”そろばんを使うというのは時代錯誤も甚だしいのかもしれません。
それこそ、エクセルやプログラミングを学ぶことのほうが今の時代には適っているでしょう。
では、今の時世にそろばんを習うことは、もう全く意味を成さないのでしょうか。
ここでは、あえて今そろばんを習うことの有用性について考えていきます。
●「今さら」ではなく、「今こそ」そろばん
結論から言ってしまいましょう。
今でも、いや、今だからこそ、そろばんを習う有用性はあります。
“将来への種まき”になります。
「計算が得意になって」「暗算ができるようになって」「数字に強くなって」受験に有利であるとか、そういったことにとどまりません。
そう遠くない将来、今以上に重宝されるであろう能力を磨けるツールが、そろばんなのです。
キーワードは、AI(人工知能)とクリエイティビティ(創造力)。
最近になって「AIに仕事を奪われる」というようなことを聞いたことがあるかもしれません。
AIが人間に取って代わって仕事をするようになり、人が就く職業の数が減るという話です。
では、どのような職業がAIに取って代わられるのでしょうか。
簡潔に言うと、ルーティンワークの性格が強い職業です。
日課のように型(やり方)の決まった作業を日々繰り返すタイプの職は、その作業をプログラム化しAIに学習させるのが容易で、一度学習させさえすれば、AIでも十分に事足りると考えられています。
例としては、量産製品の製造(家電や自動車等の組み立て)、運送業(新聞配達・トラック輸送等)、ゴミ収集などが挙げられます。
実際、製品の生産ラインにオートメーションを導入している家電メーカーも既にあるくらいで、今後もこういった無人化の流れは加速していくでしょう。
一方、AIに代替されない職業とはどういったものでしょうか。
ズバリ、創造力(想像力・直感力)が求められる職業です。
芸術家、音楽家、作家などはその最たるものでしょう。
AIは既にあるもの(=「1」)を反復したり、「1」を「10」へ発展させることは可能です。
しかし、何も無いところ(=「0」)から「1」を生み出すことはできません。
プログラムできるものが「0」なわけですから。
すなわち、「0」から「1」を創造する職業はAIが発達した時代でも奪われることはないというわけです(創造力をもったAIが現れないことが前提ですが)。
ということは、創造力を育むことこそがこれからのAI共存社会においても“替えの効かない人材”として生き残るためのカギとなるのですね。
先ほど書いた「今以上に重宝されるであろう能力」とは、まさに創造力のことです。
そしてそろばんは、この創造力を養うのにピッタリ。これを聞いて、意外だと思う人も少なくないかもしれません。
そろばんは計算するための道具、数字を扱う道具で、ロジカルシンキング(論理的思考)を司る左脳領域へのアクセスが強いイメージがありますが、実は創造力を担う右脳への刺激もかなり強いのです。
どういうことか。
そろばんの経験を積んだ人というのは、計算を行う際に頭の中にそろばんを思い浮かべ、脳内で珠を弾いているそうです。
“仮想のそろばん”を使って計算しているということですね。
そしてこの時に活発に動いているのが、イメージ脳である右脳。
本来左脳で処理する計算を、右脳で行っているのです(もちろん左脳も使っています)。
なんだか、曲芸的な巧みさを感じませんか。
筆者からすると「そりゃ鍛えられるわ!笑」という感じです。
そろばんを習う→数字を計算する際にそろばんを想像する習慣がつく→脳内そろばんを通じて右脳が鍛えられる=創造力の養成
という流れですね。
当然、計算力・暗算力(左脳)も鍛えられますから、そろばんは左右の脳みそをバランスよく熟成するのにもってこいのツールなのです。
将来貴重となるであろう「0」から「1」を生み出せる人材になるための土台作りとして、今こそそろばんに親しんでみましょう。
●ローコスト&ハイリターン
さて、ここまで右脳への好影響ばかりにフォーカスしてきましたが、他にもそろばんを習うことのメリットはあります。
数字を読み取りながら指で珠を正確かつスピーディに弾くというのは、思っている以上に集中力が要求されるアクションであり、このそろばんならではのアクションを繰り返すことで、集中するクセを身に付けることができます。
子ども・大人問わず、集中力が大切であるのは、もう言うまでもありませんよね。
また、費用が安く済むというのもそろばんの利点でしょう。
もちろんそろばん教室によって異なりますが、月謝が1万円を超えるケースはあまりありません。
学習塾だと、補習塾でだいたい月1〜2万円、進学塾であれば月3万円以上というのも少なくないですから、そろばんのコストの安さはやはり見逃せないポイントです。
ローコストで計算力、集中力、そして創造力を養うことができるそろばんに、今いちど注目してみてはいかがでしょうか。